第63章 わがまま

南坂海乃の指先が、わずかにきゅっと丸まった。

楓花――。

ついさっきまで、佐藤詩乃のために黒谷優を止めていた、あの子。

「行かない」

南坂海乃は冷たく言い捨てる。

「ですが……」上山が言い淀む。「お子さんがひどく泣きまして。誰があやしても駄目で、黒谷社長でも無理でした。さっきは手の点滴の針まで抜いてしまって……」

南坂海乃の胸が、ひゅっと縮む。

針を――抜いた?

ほら、まただ。

また、こういう手。

あの人たちは、私がいちばん弱いところを、いつだって正確に突いてくる。

見殺しになんて、できるはずがない。相手が子どもなら、なおさら。自分の子なら、なおさらだ。

南坂海乃は諦...

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